第36回秋田県多喜二祭


第36回秋田県多喜二祭(2001年2月18日)

記念講演は松澤信祐氏

新たな多喜二祭の歴史刻む

秋田県多喜二祭の記録をまとめた読本『秋田と小林多 喜二』(第2集)が刊行された。1984年以降17年 間の多喜二祭の記録集である。第36回秋田県多喜二祭 は秋田での新たな多喜二祭の歴史を刻む意義ある集いで あった。記念講演は文芸評論家・松澤信祐氏による「新 世紀に輝く小林多喜二〜秋田のプロレタリア文学の歴史 に触れて〜」で、松澤氏は2月東京、杉並・中野・渋谷 多喜二祭の講演者でもあった。
 松澤氏は20世紀を代表するプロレタリア作家・多喜 二の生涯を偲び、その業績を顕彰し現代に受け継ぐべき ものは何か。今なぜ「多喜二」か、彼がニー世紀を生き る人々に語りかけるものは何か、について丁寧に解明さ れた。多喜二の人間的成長の過程と多喜二を劇的に飛躍 させた時代の実相を共に考えたいと訴えた。
 まず何よりも多喜二の作家的生涯は5年に満たない短 いものであったこと。しかし、誠実に時代の要請に応え ようとしたこと。例えば「沼尻村」は満州事変勃発直後 に発表された「日本帝国主義の戦争準備と闘え」との「赤 旗」の呼びかけに応えた農民文学であること。さらに「工 場細胞」の創作意図をみると、当時の最も「資本主義 化」された「近代の」工場を取り扱い、今日的問題が先 駆的な形で取り上げられている。戦争前夜の困難な時期 に、すこしもめげることなく、革命の未来を信じて献身 的に生きる男女の共産党員の姿が「党生活者」の中に活 写されている。こうした点をみるならば、多喜二の文学 はニー世紀に輝くものであることは明らかでないか。と 結び、深い感動を呼び起こしたのである。

「種蒔く人」発刊80年

2001年は「種蒔く人」が南秋田郡土崎港から発信 されて80年であった。松澤氏は1998(平成10) 年秋田市で開催された日本社会文学会秋季大会に来秋さ れた人で、日本プロレタリア文学集31」所収の鈴木清・ 本庄睦男解題で知られる。
 講演の中で多喜二たちが創刊した「クラルテ」の扉詞 や日記や書簡を示し「種蒔く人」の影響を示しながら 「種蒔く人」「文芸戦線」や近代文学の視座から多喜二像 に迫った。松澤氏が『種蒔く人』80年の年に、秋田の プロレタリア文学運動の土壌と多喜二を生み出した背景、 及び小林多喜二の現代的意義を20世紀日本文学の視座 から解明された意義は計り知れない。

「七沢温泉」福元館の存在を紹介

松澤さんの記念講演は、大きなプレゼントをもたらし た。蠣崎澄子さんの夫君(邦男氏)が参加され、多喜二 が逗留した神奈川県愛甲郡「七沢温泉」福元館の存在を 紹介してくれたということである。今日では多喜二ゆか りの温泉として全国に知られているが、それまではほと んど知られていなかった。愛甲郡下の9ケ村に明治自由 民権運動の結社が組織されていたことなどは、2004 年4月16日〜18日、秋田県多喜二祭実行委員会によ る「七沢温泉福元館」ツアーが、現地を訪ねることでわ かったことである。ツアーの企画は松澤講演が強いきっ かけになったことはいうまでもない。


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