第28回秋田県多喜二祭


第28回秋田県多喜二祭(1993年2月20日)

記念講演は津田孝氏

小林多喜二没後60周年記念

小林多喜二没後60周年を記念す る集いが、秋田市で開かれました。 20日夜秋田市文化会館で開かれた 「小林多喜二没後60周年記念の集 い・第28回秋田県多喜二祭」に は、一般市民・文学愛好者ら200余 名が参加。
 「集い」は、没後60周年というこ とで、日本共産党秋田県委員会・同 地区委員会・多喜二祭実行委員会が 共催。日本共産党幹部会委員・日本 民主主義文学同盟常任幹事・文芸評 論家津田孝氏が「現在と小林多喜ニー あわせて作品に見る家族・女性の問 題について」と題して記念講演。

人間、家族・女性の問題に新しい  光をあてた津田氏の記念講演

津田氏は、「現代とは、どういう 時代か」と問いかけながら、「ソビ エトが崩壊しだからといって1907 年のロシヤ革命の世界的意義や、 それにつづく1913年の日本共産 党創立の現代的意義は、失われるこ とはない」と現代の世界と日本の政 治状況を解明。フバイブルには〈称 賛に値するものに心をとめよ〉とい う言葉がある。私は、多喜二とその 母セキに生涯注目をつづけたい」と いう作家、三浦綾子さんの言葉を紹 介。「多喜二が虐殺された戦前と戦 後は一つにつながった現代であり、 小林多喜二が生きた時代はすぎさっ た時代の問題でなく現代の問題であ る」と語りました。
 続いて津田氏は「『一九二八年 三月十五日』が書かれなかったなら 戦前の天皇制、特高警察の弾圧の実 態や、非道さは現代に知られなかっ た。また『蟹工船』にしても、国家 と資本家、軍隊が1つになって国民 を抑圧し、支配している姿を告発し ているが、同じことが言える」と小 林多喜二の作品のもつ現代的意義を 解明、「小林多喜二は、日本共産党 の犠牲者だ」などとする反動的文学 観をきびしく批判しました。
 津田氏は「現代の大きな特徴の1 つに、人間の生き方はどうあるべき か、に新しい照明があてられている。 いま小林多喜二の生き方が新しい輝 きをはなっている。人間は(組織も そうですが)、さまざまな試練をの りこえて成長するもの」「人間は、 限りなく成長するもの」と、小林多 喜二の生き方と作品にそって解明し ました。
  「しかし、その試練は個別的でそ れをのりこえることはなかなかむず かしい。小林多喜二は作品の中で人 間は成長できるものだという立場で、 人物形象を行った」として、「一九 二八年三月十五日」「東倶知安行」 を書いた時代、上京して自らも投獄 されるという試練をへて人間成長を とげたあとで書かれた「独房」「安 子」「母たち」などの作品を書いた 時期、そして非合法下の日本共産党 員として地下活動のなかで「党生活 者」などを書いた3つの時期にわけ て、その作品に登場する人物のぶっ かった試練とその成長、そして作家 自身の成長とをあとづけながら明ら かにしました。
  「党生活者」では、多喜二があら たに当面した、地下活動の試練と、 そこでの家族と女性の問題について ふれ、作品に登場する4人の女性、 多喜二の母、伊藤ふじ子とその母、 主人公の私と一時期同棲した笠原の 一人ひとりについて分析・解明し、 「主人公の母の『自分が死んでもお 前が帰ってきてつかまってしまって はいけないから知らせないことにし た』と話すエピソード、あるいは伊 藤という女性活動家の母が娘と一緒 に風呂に入って拷問の傷あとをみて 警察への怒りをつよめるエピソード、 などを通して語られる母たちの社会 的人間的成長と、主人公についてい けない笠原の苦しみの形象を統一し て考えることで、『党生活者』のい わゆる笠原問題では、主人公がこの 試練をどうのりこえて、主人公自身 がどのように成長していくのかを描 こうとした点が、新しく見えてくる」 「それぞれの人間と家族のおり方を 個別にみるのでなく統一して読まれ るべきではないか」と語りました。
  「小林多喜二が女性の社会的成長 をどれだけ重視して作品を書いたか、 女性の社会的めざめと成長と統一さ れた女性のやさしさを、成長する女 性への尊敬をこめて描いている」と し、小林多喜二が「党生活者」など の作品の中で描いた、家族と女性の 問題についての先駆的な意義を明ら かにし、小林多喜二の生涯と作品に そって、人間、家族・女性の問題に 新しい光をあてだ画期的な記念講演 でした。

中川さんの挨拶

前衆議院議員の中川利三郎さんが 主催者を代表して、第28回目をむ かえた秋田県多喜二祭と、没後60 周年の記念すべき集会が全国各地で おこなわれていることの意義にふれ、 「今の時代が多喜二を必要としてい る。いま、小林多喜二を語ることは、 現代を語るにほかならない。小林多 喜二が、日本共産党員であったこと を誇りをもって申し上げたい」と挨拶。

おぎわら和子さんの話

日本共産党秋田県委員会婦人部長、 秋田市議のおぎわら和子さんは「小 林多喜二と私と父」と題して挨拶しました。
 おぎわらさんは、「没後60年を へて、小林多喜二の生涯とその作品 は、いっそう輝いています。ソ連の 崩壊を利用して、反共攻撃が渦巻い ているいま、小林多喜二の生涯は、 私たちに大きな勇気を与えてくれる」 と、小林多喜二の作品「党生活者」 の中の母と主人公・私との感動的な 別れの場面にふれたのち、「小林多 喜二の母の事はよく聞くが、多喜二 の父はどんな父であったのか、多喜 二は父をどんなふうに思っていたの だろうか」と、自らの父親の生涯を 語りながら、多喜二は党生活者の中 で「私は思い出すのだが、父が秋田 で百姓をしていた頃……」と父のこ とを語っている。まだ日本共産党が なかった時代に抑圧と搾取に耐えて 生涯を終わった多喜二の父を、母と 同じように多喜二が敬愛していたこ とを紹介、「多喜二は私たちに歴史 の歯車をもっともっと前へ進めなけ ればならない。社会進歩のために生 き、たたかうことをよびかけている」 と語りました。

「集い」では

秋田合唱団のみなさんが「かがやいていのち」 など三曲を演奏。
 劇団すかんぽで活動している中川 祐子さんが、三浦綾子さんの小説 「母」の一節を朗読、参加者に深い 感銘を与えました。

資料展

今年は同会場で、小林多喜二の略年表、 著書、写真、当時の「赤旗」などの拡大コピー、 小樽の文学碑の写真など関係資料、 秋田県多喜二祭のチラシ、リーフ、ポスターなどの 展示がおこなわれました

参加者の感想

「大学の講議を思い出すようなお話 で、久しぶりで背すじをのばして聞 きました。いい勉強になりました」
 「若い人たちが頑張ってやっていて、 心強い。司会も決して洗練されたと はいえないが、頑張っている気持ち が、うれしかった」
 「多喜二が作品に描いた女性像のお 話、とても興味深くききました。す こしむずかしかったのでは……」
 「作品朗読がよかった。秋田弁の語 り囗がね。いつまでも心に残るかも。 涙が出て困った」
 「おぎわら和子さんのお話は、とて も感動的で、涙が出ました。限りな く成長し続ける女性像をこの目でしっ かりと見た思いです」
 「心に残る、いい集会でした。来年 もまた足をはこびたいと思います」
 「とても、勉強になりました。とく に、家族の問題、人間も、組織も試 練を越えることで成長できるという お話は、本当にそう思います」
などの感想がよせられました。

小樽からのメッセージ

秋田市の「記念の集い」には、小 樽多喜二祭実行委員会(松本忠司代 表)から「人間が真に人間らしく生 きられる『新しい世の中』(党生活 者)の実現をめざし、全身、全人生 をかけてたたかいぬいた多喜二の遺 志、生き方を私たちはどう引き継ぐ か」と火を継ぐものたちとしてのメ。 セージがよせられました

大館市 小林多喜二記念のつどい

大館市では、「第14回小林多喜 二記念のつどい」が、21日午後、 大館・北狄教育会館を会場に、同実 行委員会の主催で開かれました。会 場一杯ほぼ100名の参加という盛会 でした。
 記念講演は、津田孝氏。日本共産 党を代表しておぎわら和子氏が「小 林多喜二と私と父」と題して挨拶。
 他に、「小林多喜二の作品地区の 人々」の一節が朗読されました。  また、小林多喜二生誕の地保存会・ 小林正雄会長が、「文学碑をつくる というお話があると聞いていますが、 みんなで協力していきたい」と挨拶

文学同盟四支部が集う

この日、大館市の集いには、文学 同盟弘前支部から、阿部誠也支部長 ら7名が参加、また、能代・山本支 部準備会からは平野庄司、見上浩氏 ら7名が参加、秋田支部から佐藤好 徳氏が参加するなど、期せずして4 つの支部が集うことになりました。 この光景を多喜二はなんと見ただろ うか……。

生誕の地碑を訪ねて

講師の津田氏、おぎわら和子氏ら は、集会に先だって、同市川口の 「小林多喜二生誕の地碑」「小林多喜 二生家跡」を訪ね、小林多喜二の生 涯をしのびました。

サインセール

なお、秋田市と大館市の2つの集 会を通じて、講師の津田さんのサイ ンーセールが好評で、同氏の著書 「小林多喜二の世界」(新日本出版刊、 定価2000円)が45冊、『民主文学』 2月号(小林多喜二特集)42冊が 販売されました。


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