第24回秋田県多喜二祭


第24回秋田県多喜二祭(1989年2月19日)

記念講演は右遠俊郎氏

24回目を迎えた秋田県多喜 二祭が2月19日午後、秋田市の千 秋会館で開かれました。多喜二文学 の愛好者、一般市民など120人が 参加。
 実行委員会を代表して作家・鈴木 清氏が「多喜二祭は、多喜二の生涯 と文学に学んで自分の生き方を深め ようと、市民に待たれる集会となっ た」と多喜二祭の意義にふれて挨拶。  中川利三郎前衆院議員が共産党秋 田県委員会を代表して「特高警察に よって虐殺された小林多喜二の死を 忘れることはできない」と、また、 ヒットラーの戦争も侵略戦争でない とする竹下首相を厳しく批判、「天 皇の開戦責任は明白、戦争責任をう やむやにすることは許されない」と 挨拶。

演題「小林多喜二と天皇制・多    喜二文学が今日に問うもの」

文学同盟常任幹事・作家の右遠俊 郎氏が「小林多喜二と天皇制・:多喜 二文学が今日に問うもの」と題して 記念講演。
 右遠氏は、天皇の葬儀の行われる 新宿御苑付近は、今15分毎にパト ロールがおこなわれている。24 日になったら戒厳令下と同じになる のでは、と天皇の死をめぐる異常事 態にふれ象徴というあいまいなもの から戦前の天皇制にもどそうとする 策動がすすんでいる現状を批判しま した。
 多喜二の死を「獄死」としている 文学集の年譜もあり、「頓死」だと する評論家もいる。文芸評論家・桶 谷秀昭は「小林多喜二は党に忠実で あったため殺された」と書いている が、小林多喜二は特高警察の手で虐 殺されたのである、と多喜二の死の 真実について語りました。  右遠氏は、天皇の死に「哀悼の意」 を表している作家の中には、おっと 思うような作家の名前もみうけられ、 北杜夫氏の様に「天皇を批判するこ とはいいことだ。言論は自由なのだ から」といいながら「天皇は人柄が いい」とも言っている大もいる。天 皇と、人柄が判るほどのどんな親密 なつきあいがあったのだろうか。  高井有一氏は、「新天皇のお言葉 は、難しい漢語と古文体の中味のな い貧しいものだ。」「平成の元年が始 まったが、私は希望をもっていない」 と語っているなど、天皇の死につい ての作家と文学者の動向を紹介しま した。
 右遠氏は、「多喜二の文学は弱者 にたいする優しさから始まっている」 「失恋しなければ『一九二八年三月 十五日』は書かれなかったのでは」 などと酌婦・田口夕キとの恋愛のエ ピソードをまじえながら、小林多喜 二の作品「一九二八年三月十五日」 は1928年5月のナップの機関誌 「戦旗」にのった蔵原惟人の評論 「プロレタリアーレアリズムヘの道」 に大きな影響をうけ「前衛の目をもっ て描く、対象を生きいきととらえる」 ことをめざした作品で、言うところ の処女作であった。「一九二八年三 月十五日」は、天皇制政府がなにを やったか、天皇制政府と特高警察の 拷問に真っ向から挑戦した日本近代 文学上での画期的作品、小林多喜二 はこの作品を書いて特高警察を震え あがらせていたが、同時に特高の怒 り、憎しみをうけ、虐殺された。と 語り「こういう時代に決してしては ならない。」と訴えました。
  (註)右遠俊郎氏の講演にある    「プロレタリアーレアリズム   への道」(1928年5月「戦   旗」増刊号)の正確な引用は、   次のようになる。    <第1に、プロレタリア前衛の「眼をもって」世界を見ること、第2に、厳正なるレアリストの態度をもってそれを描くこと-これがプロレタリアーレアリズムヘの唯一の道である>

多彩な催し

多喜二祭では、北方自由詩人集団・ 藤田励治氏、秋田詩人会議グループ・ あさあゆむ氏が自作の詩をそれぞれ 朗読。
 秋田市の医師・文学同盟秋田支部 の松田幸夫氏は「天皇は、『赤子』 と呼んでわが子と同じと言った国民 を殺した。”殺人鬼”と同じ」と同時 代の証言を行い参加者に感銘をあた えました。
 会場には、小林多喜二関係の書籍 や、多喜二祭参加の作家、文学者な どの色紙、県内の著名人の色紙など が展示され、多喜二と多喜二祭の歴 史がわかるコーナーも設置されまし た。
 また、秋田合唱団の合唱、わらび 座の小公演が行われました。

多喜二祭賞

1961年創立、秋田県の民主的 文化運動とうたごえ運動の発展のた めに頑張ってきた秋田合唱団(伊藤 睦子団長)と十数年にわたって多喜 二祭実行委員として、多喜二祭の成 功と発展に尽力してきた高坂裕子氏 に、本年度の多喜二祭賞が贈られま した。

右遠俊郎氏の著書

短編集「赤いシクラメンの花」 25冊、長編、「小説・朝日茂」10冊が売れ ました。
  「小説・朝日茂」は集会の翌日、 第21回多喜二・百合子賞受賞の 発表があり、「買わないでしまって 残念」という声もありました。

参加者の感想

「歴史の逆流と時代錯誤のなかでの 多喜二祭が大きく盛りあがった。有 意義であった」
 「当時の資料、写真などの展示をぜ ひ」
 「秋田県出身の作家として、もっと 秋田の人々の中にに広げていける機 会になる多喜二祭に」
 「右遠先生の話は、軻の凝らないお 話の中に天皇をめぐる現在の情勢が 語られ、多喜二を通じていまの瞬間 の生き方を再確認させられたように 思う」
 「文学者や詩人などの話を聞く機会 はすくないので、ひき続き企画して ください」


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